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東京地方裁判所 昭和40年(ワ)4398号 判決

原告(反訴被告) 斎藤建設株式会社

右訴訟代理人 渡辺英男

〈外三名〉

被告 刈谷軍三

被告(反訴原告) 有限会社花井不動産

右訴訟代理人 大高三千助

〈外一名〉

主文

本訴につき

原告の請求を棄却する。

反訴につき

反訴被告(原告)は反訴原告(被告会社)に対し金一一三万円及びこれに対する昭和三八年一二月六日以降支払済まで金一〇〇円につき日歩八銭二厘の割合の金員を支払うべし。

反訴原告のその余の反訴請求を棄却する。

訴訟費用は全部原告(反訴被告)の負担とする。

事実

(一)  原告(反訴被告)(以下単に原告と略称)の請求の趣旨、原因並びに反訴に対する答弁は、未尾添付の訴状写の通りであって、

(1)  その要旨は、原告は被告刈谷との間に、手形割引契約、根保証契約、根抵当権設定契約、停止条件付貸借権設定契約、停止条件付代物弁済契約を締結し、同被告から合計八〇万五〇〇〇円を借入れたところ、同被告は被告会社に対し右債権と右根抵当権を譲渡したので、原告は被告会社に対して昭和三九年二月二一日右八〇万五〇〇〇円を現実に弁済提供したが受領しないため、弁済供託し、これにより右債務は元利金とも消滅した。よって本件各登記の抹消を求めるというものであり、

(2)  反訴原告主張の、四〇万円を原告が借入れたこと、これを原告が昭和三六年七月二〇日迄に被告刈谷に弁済することを約したこと、被告会社が被告刈谷からその主張の債権、抵当権等を譲受けたことは否認し、同三六年九月二日付原告宛の通知が九月四日に到達したことは認めた。

(3)  〈省略〉。

(二)  被告刈谷、被告会社(反訴原告)(以下単に被告会社と略称)の答弁並びに被告会社の反訴請求の趣旨、原因は末尾添付の反訴状写の通りであって

(4) 原告の主張事実中、原告主張の取引契約を締結し、その登記を経由したこと並びに弁済供託の事実は認めるも、原告の負担する債務額は原告主張よりも多額であって、消滅しているものではない旨主張して争い、

(5) 反訴請求の要旨は(イ)中野五郎は原告に対し金四〇万円の貸金があり、被告刈谷に対してこれが債権を譲渡し、原告はこれを承諾して後記(ロ)の貸金と共に昭和三六年七月二〇日迄に弁済することを約した。(ロ)そのほかに、被告刈谷から原告に対して貸付けた別表(反訴状)〈省略〉の貸金八〇万五〇〇〇円があり同人はこれも被告会社に対し根抵当権と共に債権譲渡し、同三六年九月二日原告宛にその通知をなし、九月四日到達した。この金員については利息制限法に従い計算すると元本は金七三万〇一四四円となる。以上(イ)(ロ)を合計すると金一一三万〇一四四円となるので端数を捨て、内金一一三万円及び原告が弁済を約した右三六年七月二〇日の翌日以降日歩八銭二厘の割合の損害金を付加支払を求めるというものである。

(6) 証拠関係〈省略〉

理由

原告が被告刈谷との間で原告主張のような内容の各契約を締結(債権元本極度額金二〇〇万円、損害金は金一〇〇円につき日歩八銭二厘の約)し、その主張のような各登記を経由したことは当事者間に争がなく、被告会社主張の(ロ)の貸金即ち反訴状添付別表の通り合計八〇万五〇〇〇円の被告刈谷の原告に対する貸金ありとの主張に対し、原告は、その主張において金八〇万五〇〇〇円の貸金債務あることを自認しているのであって、弁論の全趣旨により、且つ右貸金の貸付に際してなされた天引につき利息制限法所定の計算によるときは、右別表記載の通りの貸付元本の計算となるものであって、右元本合計は金七三万〇一四四円となることが計数上認められる。

次に成立に争ない乙第八号証の四及び七証人中野五郎の証言によれば、同人は、昭和三五年四月頃以降約六カ月間に数回に亘って原告に対し合計金四〇万円の貸金があったこと、同三五年一一月頃同人から被告刈谷に対し右の債権を譲渡したことが認められ〈省略〉結局被告刈谷は原告に対し前記七三万〇一四四円及び右四〇万円の債権を有したものであった。そして成立に争ない乙第八号証の四及び七により真正に成立したと認められる乙第一号証〈省略〉並びに弁論の全趣旨によれば原告は被告刈谷に対し右各債務につき、これを昭和三六年七月二〇日限り持参支払うことを約したことが認められ、成立に争ない乙第七号証の一と弁論の全趣旨を総合すれば、昭和三六年九月二日被告刈谷は原告に対する右各債権を原告主張の根抵当権及び停止条件付貸借権設定契約上の権利と共に被告会社に譲渡したことが認められ、同月四日その通知が原告に到達したことは当事者間に争ないところである。

しかして原告が昭和三九年二月二一日被告会社に対して八〇万五〇〇〇円を弁済供託したことは当事者間に争がない。しかし右供託金額は元本えの充当に先立ちまず利息損害金に充当せらるべきところ、被告会社が右債権を取得した昭和三六年九月四日から右弁済供託がなされた同三九年二月二一日迄右七三万〇一四四円及び四〇万円(合計一一三万〇一四四円)に対する金一〇〇円につき日歩八銭二厘の割合の損害金を計算すると、金八四万四〇四六円の計算になるので、少くも右弁済供託せられた八〇万五〇〇〇円はこの損害金に充当して残余はないことになる。してみると、本件元本債権は未だ消滅しているものとはいえないところである。右八〇万五〇〇〇円の充当について当事者双方は何ら計数上の主張をしていないのであるが、その弁済供託により少くも本件貸金について原告の損害金債務は損害金の約定額に従う範囲で消滅しているものとみるべきところ、本件弁済期の昭和三六年七月二〇日の翌日である同月二一日から金一〇〇円につき日歩八銭二厘の計算で充当してゆくと、同三八年一二月五日迄の損害金に充当される計算になるものと認められるので、結局被告らに対し、原告主張の債務の不存在並びに各登記抹消を求める原告の請求は失当として棄却することとし、反訴原告(被告会社)の反訴請求は、右一一三万〇一四四円の内金請求にかかる金一一三万円及びこれに対する右昭和三八年一二月六日以降支払済に至るまで一〇〇円につき日歩八銭二厘の割合による金員の支払を求める限度(弁済期として約定された昭和三六年七月二〇日までの利息ないし損害金については、弁済のなされた事跡なく、かえって、弁論の全趣旨によれば弁済のなかったことが窺えるけれども、その充当について当事者の明確な計数上の主張を欠き、且つ訴訟上算定の基礎が明らかでないので計算に算入しないこととする)で反訴請求は理由があり、その余の反訴請求部分は棄却する〈以下省略〉。

〈以下省略〉

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